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ようこそ、僕の『暗い青春』;坂口安吾

 2005・11筆記

 安吾を私は嫌いではなかった。むしろ好きな作家のひとりとして遵(したが)えていた。龍之介の甥であった葛巻義敏なる人物と共に若き安吾は、自殺した龍之介の一室を借りて同人誌の編集を行っておりました。冒頭、その一文から始まる、安吾の作が『暗い青春』です。10代当時、私はこの簡素なタイトルからして不可思議な磁場を持つ安吾特有の世界観に引き寄せられるままに読んだ記憶があります。あの安吾特有とは自虐的高踏観念、すらすらと読み綴っていける文章体にこそ、実は緻密な頭脳から形作られたパズルをゆっくりと丹念に紐解いてゆくレシピが施されている。高飛車かと思わせておいて、実は妙にへりくだってみせたりもする、ゆえになるほど、彼の描く空想世界は、読み手に様々な疑問符を抱かせてくれるのでした。

 『金銭無情』や『散る日本』『破門』、『魔の退屈』といった安吾ならではの文章で綴られた小品も、私の中では、聡明なるその眼で当時の現代をしかと照射した、言わば叙情歌。歌にも浄瑠璃・ポピュラー・フォーク・演歌、全く様々あるように、安吾もまた次々と変幻自在に手を変え品を変え、当時の世相を切り刻んでゆきました。なのに彼は、はっきりと周りの者に告げていたそうな。「私は私に自信が持てぬ。他人はされど私には満々たる自信に満ち満ちているかのような印象をうける、などと言う。冗談じゃあ、ない」

 暗い観念を判然と、暗いと書ける度量は、けだし、安吾とか太宰治、くらいでしょうね。太宰が、それこそ暗い洞窟を、「怖いよ、怖いよ」と言いながらけれどぼちぼち歩を進めていける人物だとするならば、安吾はさしずめ、そんな前を行く太宰に「こんちくしょう」と石を投げつけながら歩んでいくタイプの人物、だったのかもしれませんね。青年諸氏は、枕辺に一冊、安吾を携えて一夜を共にするのが、よろしいかと。暗い洞窟をただ闇雲に走り続けていた、それこそ青春時代の私は、そういう安吾的“臆病者”だったのかも知れません。(他・筆者管理サイトより転載)

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