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青春の色香。上着の懐にはいつでもこの詩人の詩集が……;アルチュール・ランボー 

 2006・3筆記

 【ある雑感・わたしの懐かしいひとに寄す】

 私は、このひとの影響を全く享けなかった?、いや甚だしく享けた?……どちらとも言い難い。記憶はもはや彼方にあって、私はこのひとをおおいに愛し、そうして酒浸りでその人生を「正に狂わされた」その方を、いま思う。世間的には未だに無名、だが、そんなことは「きっとちっぽけなことよ」とその方は豪快に笑い飛ばすに違いない。ギター弾きでありました。思想を恒に語るひとでありました。「お前は恒に固定観念に惑わされており、イメージなんてものに囚(とら)われるから良いものが書けねえんだよ」とよく私に悪口を吹きかけてもきたくせに、自分は泥臭い、当時、最早、時代遅れのメッセージ色の濃い、さも、あのボブ・ディランに代表されるかのような楽曲を恒に弾き語っておりましたね。無精ではない、口髭と顎鬚(あごひげ)を蓄え、40ちょい手前かと思わせる風貌とその体躯は大柄であり威圧感がありました。私も随分、酔わされたくちなのですけれど、その方を私はその出逢いの当初から好んでおりましたね。いやいや、なんというか、男として異業な感じが、その全身、漂っていたと申しましょうか?。当時としてももはやあまり見かけないタイプと申しましょうか?。突き刺すかのような独特のまなざしにいま思うに何か背負ったかのような業を感じていたんでしょうかね。

 東京は狛江のその住処に何度もお邪魔して、屈託無い時を過しました。20代の私のそれは、青春の色香。懐かしく芳しき、青春という“迷い人”の色香。何故だか、その方はこの私をいついかなるときでも絶賛し、批判し、非難を浴びせ、賞賛し、そう、四六時中、私のことを語り、そうしてある席で、けれど「俺が出遭った中で、お前が一番、ひとを射抜く言葉を知っている奴だ」と。褒められているのか、けなされているのか、難しい話しを振ったかと思えば、すぐその言葉も乾かぬ内に駄洒落を連発し、けむに巻いてきたりする。なんとも大迎、掴(つか)みどころが無い。ひとを指差し、会話を続ける悪い癖もあったその方なのですけれど、私はいまだにあのひとが、忘れられずにいます。酒とギターをこよなく愛し、酔うと怒りが際立つのか、そのギターを粉々にぶち壊したりしてみたり……。まぁ、よく解らない(笑)。とにかく生き様が無茶苦茶な漢。なのに、翌日にはけろっとした顔で「……また、買ってこなきゃよお」と舌を出して、含み笑いを見せていたお茶目なところもあるひとでした。

 音楽家・立花薫(仮名)。その方のモデル形とも言うべき登場人物。私はあなたをモチーフに章を立てた記憶もありますよ。

 あれから10数年……。幾年(いくとせ)。そうしてあなたがこよなく愛した詩人こそ、そうアルチュール・ランボー、かの異業の詩人でしたよね。ごめんなさい。私はまた在るイメージに囚われて仕方が無い。ランボーの詩集を懐に携えて……そんな姿がもっとも映えたおひとがその方、あなただったよなという気がしています。

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 アルチュール・ランボー、太陽と永遠。
 アルチュール・ランボー - Wikipedia

 アルチュール・ランボー:初期の詩の数々
 
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 ランボーを撃つ

 アルチュール・ランボー年譜

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